2026年6月4日(木)、オーストリア・ウィーンで開催された IEEE International Conference on Robotics and Automation(ICRA 2026)において、研究代表者の稲邑が基調講演(Keynote)に登壇し、“Engineering Human Agency and Self-Efficacy: The Next Frontier of Human-Robot Symbiosis” と題して講演しました。
ICRA はロボティクス分野で最大規模の国際会議です。稲邑は Keynote Session「Human-Robot Interaction」の登壇者として、Julie A. Adams 教授、Marcia O’Malley 教授、Berk Calli 教授とともにプレナリー会場(Hall A1)で講演を行いました。
講演の要旨
支援ロボットが研究室から日常生活へと移行するとき、ひとつの逆説が現れます。過剰なロボット支援は、「自分の行動の起点は自分である」という感覚、すなわち Human Agency(人の主体性)を損なってしまうのです。真の共生を実現するには、ロボットは身体的な不足を補償するだけでは足りず、ユーザの自己効力感を育て、維持するように設計されなければなりません。
本講演では、身体的支援からメタ認知的なエンパワメントへと至る研究の道筋を示しました。まず JST ムーンショット型研究開発事業 目標3 の成果として、支援ロボットと VR による感覚錯覚を統合することで、主観的な努力感と実際のパフォーマンスを切り離し、ユーザの自己効力感を意図的に操作できることを示しました。
しかし、真のエンパワメントには一時的な感覚操作ではなく、人自身の成長が必要です。そこで本 CREST プロジェクトの枠組みである Self-Mirroring Twins(SeMT)を提案しました。SeMT は認知の誤りを修正する道具ではなく、ユーザが自分自身を客観的に観察する能力を育てる「メタ認知の鏡」として機能します。SeMT とのインタラクションを通じて、ユーザは自らの行動を振り返り、理想とするパフォーマンスに向けて意図的な行動変容を始めます。これにより、実際のスキル向上に裏打ちされた強固な自己効力感の獲得が可能になります。
この「Engineering of Agency」が最終的に目指すのは、ロボットを、人が自らの限界を認識し押し広げることを助けるパートナーとして定義し直すことです。ロボットの進化によって人がより依存的になるのではなく、より力づけられ、より有能になっていく未来を目指します。
開催概要
- 会議:2026 IEEE International Conference on Robotics and Automation(ICRA 2026)
- 日時:2026年6月4日(木)16:45〜18:15
- 会場:Hall A1(Plenary)、ウィーン(オーストリア)
- セッション:Keynote Session「Human-Robot Interaction」
- 登壇者:Julie A. Adams/Marcia O’Malley/稲邑 哲也/Berk Calli
講演の詳細はICRA 2026 の Keynote Sessions ページをご覧ください。
